黒い革のスリッパ

昨年、平成27年は豪雪でした。
連日、水を含んだシャーベット状の重い雪が、空のふたが壊れてしまったように容赦なく降り続き、私達は家族総出で毎日“雪またじ(飛騨弁で「雪を片付ける」という意味)”に追われておりました。
我が家の裏は山続きになっており、家の半分が雪ですっぽりおおわれたような状態になってしまいました。
晴天の見えない日が続き、私は精神的にウツ状態でした。

そんなある日、家の裏の勝手口にいつも置いてある、外用の25センチサイズの黒い革製のスリッパの片方が消えてしまったのです。右足用です。
あたりを探しましたが見つかりません。
外ばきが無いと不便なので、仕方なく玄関用の同じ形の履物を代わりに置きました。
しかし数日後、またしても右足用のスリッパが片方だけ消えてしまったのです。
あたりをたんねんに探してみましたが見つかりません。
消え方が不自然なので家族にスリッパのゆくえを聞きましたが心当たりは全くないという返事。
よくよく考えた末、動物のしわざじゃないかという結論に達しました。

いろいろ想像をしてみました。
動物にとって危険な存在である人間のにおいのするスリッパをあえて身近に置いて、他の天敵への護身用にしたのか、巣穴のドア代わりにしたのか。
あれこれ想像しているうちにとても愉快になって、声を出して笑ってしまいました。

5月の暖かいある日の夕方。我が家へ続く坂道を車でゆっくり登っていたときのことです。なぜか気になってバックミラーを覗くと車の後ろを大きなキツネがシッポを揺らしながら、まるで追いかけてくるように小走りでついてくるのが見えました。

  

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